氏名: ヘルマント (289834317)

論文題目: 独立成分分析を用いた実物体と映り込みの分離


論文概要

我々の周りには映り込み現象がよく見られる.窓ガラスなどの透明物体を見た場合, ガラスの表面に手前にある物体(虚像)が映り込むので,ガラスの背後にある物体 (実像)と虚像が重なって見えてしまう.このため,実像の認識が困難になる. しかしながら,これらの実像と虚像は,偏光という光学的性質を用いて,すなわち, 偏光フィルタをカメラに取り付けることで,分離できる.これまでに提案されている方法では, 偏光フィルタを回転させながら撮像し,観測された各画素の輝度値の最大値と最小値を 用いることで映り込み成分を分離していたので,入射角などに制限があった. 本研究では,独立成分分析を用いることで,入射角に関するこの制限を取り払う. これまでに,独立成分分析に関しては,様々なアルゴリズムが提案されているが, ここでは,収束が速く,実装が簡単なFast-Fixed Pointアルゴリズムを用いる.

はじめに,映り込み現象の理論的な事柄を明らかにし,ある幾何的な設定における 映り込みのモデルを提案する.映り込み画像は,二つのソース画像(実像と虚像)の線形結合 であると考えられるので,独立成分分析を用いて,その結合係数を求め,分離を行う. この結合係数は,実際には画素ごとに異なるが,偏光の物理的な性質から, 隣接する画素の結合係数は,互いに近い値であると考えられる. そこで,画像を部分画像に分けて,その部分画像内では結合係数が一定であるとする. そして,それぞれの部分画像に対して独立成分分析を用いて実像と虚像を分離し, それらの分離結果をまとめ上げることで全体の分離結果とする. しかし,独立成分分析の分離結果にはスケールと順序の曖昧さがあるので,単純に分離結果を 合成するだけでは,全体の分離結果とはならない.そこで,分割する際に隣接した部分画像間に 共通部を設けて,これを用いてスケールと順序を合わせることにする. このような考えに基づいて映り込み分離システムを作成し,提案したモデルに従って作った 合成画像と実際に偏光フィルタを通して撮った実画像を用いて分離実験を行った. 実験結果では,各部分画像について,実像と虚像がうまく分離できた. そして,共通部を用いることで部分画像間の順序とスケールの問題を解決できた.


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