氏名: 米田 貴博 (289834368)

論文題目: 視覚障害児の歩行能力向上を支援するシステム


論文概要

視覚障害児の中には,直線的な歩行や右左折などの基礎的な歩行がうまく行えな い児童がいる.この基礎歩行能力は,盲学校で行われる歩行訓練(屋内外で安全 に歩行するための訓練)の際に必要となる能力であり,実際に盲学校で獲得のた めの指導が行われている.

本研究では,先に述べた基礎歩行能力の向上を支援する計算機援用学習(CAI) システムを作成した.システムが対象とするのは,基礎歩行を行うことのできな い視覚障害児である.学習に用いる課題は,与えられた経路を目標として歩行す るパターン歩行課題と,自由にランドマークを探索する自由歩行課題の2題であ る.学習者は,運動空間を表す点図と音声により課題を提示され,課題に従い運 動空間内を歩行する.目標経路と歩行経路のずれなどを,歩行中に音声フィード バック,歩行終了後に,音声および触覚フィードバックにより知覚することがで き,より高い学習効果を期待することができる.また,システムにより学習者の 歩行経路を計測,提示することができるので,指導者の労力削減や学習の記録が 取れるといった利点も挙げられる.

これらの課題を実装するために,システムは,計算機,画像処理ボード,点図プ ロッタ,触図台,8mmビデオカメラと全方位カメラで構成される.学習者が触 図上の位置を確認しながら音声フィードバックを利用するために,触図台の上方 に設置した8mmビデオカメラの映像に画像処理を行い,触図上の一点を指し示 した学習者の指先の位置を抽出する.また,学習者の運動空間内での歩行経路を 計測するために,運動空間に設置した全方位カメラからの映像に画像処理を行 い,学習者の位置を計測する.課題提示と課題終了後の触覚フィードバックで利 用する触図は,点図プロッタにより出力する.

盲学校の協力により3名の視覚障害児に対して実験を行い,本システムが視覚障 害児の基礎歩行能力向上に関して有効であるかどうかを検討した.


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