氏名: 遠藤知彦 (m06733)
論文題目: 3次元胸部CT像における成分図形の認識に関する研究
--- 肺野領域および肺がん候補領域の自動抽出 ---
論文概要
本論文では,3次元胸部CT像の診断支援システムの前段で行われる肺野領域の自
動抽出手順の改善,および計算機により自動抽出された肺がん候補領域(以下
SR)が真の肺がん陰影に対応するか否かを判定する新しい手順について述べる.
--- 肺野領域の自動抽出 ---
原画像に対するしきい値処理と図形融合処理を組み合わ
せた従来の手順では,胸壁に付着する病変部が存在する場合,その部分の正確
な肺輪郭面が得られないという問題点があった.そこで今回は,肺野内の病変
による影響を受け難い肋骨を用いて肺野領域の抽出を行う手順を開発した.肺
とその周辺の構造に着目すると,肋骨は肺野全体を覆い内側は肺野に接してい
るため,この肋骨と接する領域の輪郭面の推定は可能である.実際の処理では,
まず胸部CT像からしきい値処理により肋骨領域を抽出し,肺野に接する肋骨の
内側包絡面を抽出する.次に,従来の手法により抽出された心臓や肺門側の縦
隔洞面と組み合わせ,最終的な肺野領域とする.本手順を実際の3次元胸部CT
像16例に適用したところ,従来は胸壁付近の病変等により肺野領域に欠損が生
じていた症例においても,正確な肺野領域が抽出可能であることを確認した.
--- SRの詳細な判定 ---
従来の研究において自動抽出されたSRとその付近の構造物
(血管・気管支)の大きさを用いて,注目するSRが真の肺がん陰影に対応する
か否かを判定する.具体的には,まず最初に各SRおよびその付近の構造物を個々
に抽出する.次に各図形の芯線上における背景画素までの最短距離を計算し,
これを注目する芯線付近における図形の半径とする.SRの中心部からそれに接
続する各成分図形の芯線を通るような経路を求め,経路上における図形成分の
半径の変化を基に,注目するSRが真の肺がん陰影であるか否かの判定を行う.
これにより,SRの大きさのみで判定していた従来の手順と比較し,肺門部付近
での小さな肺がん陰影の見落としを削減可能であると考えられる.上記手順を
実際の胸部X線CT像に適用した結果,本手法が真のがん病変部を判断可能であ
ることを確認した.
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