氏名: 田中昭二 (m06744)

論文題目: 優先順序付き並行演算子を組み込んだCCSとその応用


論文概要

本研究では並行計算の形式的モデルであるCCS(Calculus of Communicating Systems)に優先順序付き並行演算子を組み込んだ体系PCCS(CCS with Priority)を提案する。PCCSでは、CCSにおける内部動作を単位時間経過と みなし、並行計算に優先度を導入することによって、並行実時間システム をモデル化している。本研究における優先度は、並行実時間システムの時 間制約の実現において、デッドラインがせまった処理については高い優先 度を与えるというものである。この手法を形式的にモデル化することによ り、並行実時間システムの仕様記述・設計が形式的に行なえるようになり、 動作の検証・無矛盾性などの性質の解析が計算機で処理できるようになる。 本論文では、PCCSの動作式、動作式間の遷移関係を定義する操作的意味論 について議論し 、実時間スケジューリング、優先順序付き通信プロトコル などの例により、PCCSによる並行実時間システム実現手法を示す。また、 CCSの実行解析ツールであるCWB(Concurrency WorkBench)を拡張することに より、PCCSの実行系を計算機に実装する。そして、PCCSによる並行実時間 システムの記述例を解析し、動作の検証を行なう。また、PCCSの等価性モ デルとして、強等価、弱等価、efficiency prebisimulationなどについて 考察を行ない、とくに強等価に対して、等式論理に基づく書き換えによっ て等価性を判定する完全な公理系を構成する。
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