一般に、多次元関数の定積分値を求める場合、関数評価の数は、 1次元積分で必要な数の次元乗程度であって、大変膨大な数となる。 そこで、多次元関数の数値積分則の構成では、標本点数を実用に 耐えられる範囲までおさえることが重要な課題となる。 本論文では、多次元積分の標本点集合として、Zengerの考案した 疎格子を用いることを試みた。疎格子とは、基本周期を1とする階層 型の標本点集合で、次のような性質を持つ。 (1)段階毎に標本点数が増加する。 (2)各段階の標本点集合は、その前の段階の標本点集合を全て含む。 特に、(2)の性質を利用することで、標本値を再利用しながら標本点 数を増加させていく形の積分則が構築可能である。 本研究では、対象とする関数を、Korobov型関数(比較的低周波の 周期関数)として、疎格子の特徴を活かした積分則を構築した。 また、数値実験によって、代表的な多次元積分則である優良格子 点法(Good Lattice Point法)との比較を行い、その有効性を示した。
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